2021-09-10

貴族とはただ身分が高い人を指すのではない

私の統計によると、葡萄酒を飲む機会を避けてきた大人は、気の利いたワインをサービスされたときに、75%の確率で「飲みやすいですね」という感想を述べる。

たしかに日本国憲法では、表現の自由が認められているし、フランス人でもない私にダメ出しをされる道理は無いのだが、美味しい一杯を選んでくれたソムリエに敬意を示すためにも、せめて「木なりのフルーツの香りがしますね」や「鹿肉に合いそうですね」くらいの言い回しはしたいものである。

そのような「食の教養」は、体験を通して身に付けるしかないのだろう。私自身、知らないことばかりだが、知らないままでは恥ずかしいので、日々、外食修行を怠らないようにしている。

先日、ウイスキー愛好家の賢人より会員制の割烹料理屋にお招きいただいたので、本日はその様子を一部ご紹介させていただこう。

賢人が毎週通い詰めているという会員制の料理屋は、わずか3席のカウンターで主人自らおもてなしをして下さった。

まずは重陽の節句にあわせて、無病息災を願った菊酒で乾杯をする。

恵みに感謝し節句を祝う在り方は、平安の貴族から広まったとされているが、オルテガも言うように貴族とは、ただ身分が高い人を指すのではなく自らを由とせず凡庸である大衆へのアンチ・テーゼなのだろう。

このように料理を通して倭人の何たるかを学べるこの環境は、「お腹を満たす場」ではなくもはや「和教養の聖域」と呼ぶのが相応しい。

こちらは前菜の一品で、柿をくりぬいた器に仕立てる「なます」だ。細造りにした平目と滑らかに下ろされた大根が舌の上で調和し、そこに、山田錦の優しい酒が流れてひとつの物語が完結する。

日本最古の果物である「柿」のポテンシャルは凄まじく、もしおかわりを頼める制度であれば、あと7個ほど持ってきていただきたいほど美味であった。

このような調子で、松茸にのどぐろ、くわいに銀杏と、主人の眼鏡に適った季節の一品がよく合う酒と共に次々と運ばれてくる。

おもてなしもここまで来るとさすがに気が引けるが、それでも倭人の心を知るためには、通らねばならない路なのだろう。

主人と賢人に心からの感謝を込めて。


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ご存じの通りKは偏屈で気難しい人物である。それゆえ友達が少ないため申請してあげると喜ぶに違いない。

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コメント23件

  • Sayuri Si says:

    Hello Mr.K!

    ステキなお店で食事をされたのですね。考えられた食事とお酒の組み合わせは、素直に受け入れたくなります。きっと二日酔い効果も考えてお料理の素材も選択されていると思ってしまう粋な演出ですね。

  • まれすけ says:

    「木なりのフルーツの香りがしますね」や「鹿肉に合いそうですね」
    この二つのセリフは、今度ソムリエのいるレストランで使ってみたいと思います。全く的外れで「は?」って言われるかもしれませんが・・・。
    柿は、ばあちゃんの家の庭に大きな実をつける次郎柿の木が三本あり、じいちゃんが丹念に世話をしていました。近所のガキンチョが盗まないように、竹ぼうきを持って番をしていたじいちゃんを思い出します。
    ばあちゃんが作るなますには、大根と同じように細切りにされた甘さの強いその柿が入っていました。なので、砂糖は入っていませんでした。
    ばあちゃんに聞いたのですが、和菓子の甘さは干し柿の甘さを基準にしていると教えてもらったことを思い出しました。

  • ゆうこ says:

    Kさん、こんばんは。
    20歳そこそこの時は
    夕食はほぼ友だちと外食でしたが

    今となってはお家ご飯が大好き過ぎて
    誘われない限りは家で食事しています。

    ですが、こうしてKさんが訪れたお店の
    美しいお料理の写真を見る度に

    外食で学ぶことも必要だと感じざるを得ません。

    どなたか、私を外食に誘ってください、と
    願っておきます

  • Yuto Ueda says:

    食事は教養。
    本当にその通りだと思います。
     
    食事やお酒のマナー、それらの種類や味の深さ。
    体験してみないと分からないことが山ほどあるからこそ、僕は外食は一種の投資だと捉えています。
     
    知らないことを知らないままにしない。
    知的好奇心に逆らわず、これからも楽しく食と向き合っていきたいと思います。

  • 琴美✈︎kotomi says:

    Kさん、本日も素敵な記事をありがとうございます。

    「このワイン、飲みやすいですね。」

    これは言ってしまう率100%ですね。

    きっと気の利いた事をと思っても、結局は何も思い付かずコピペしたかの様なこのワードを棒読みで言ってしまう自分が簡単に想像出来てしまいました。

    和食は本当に芸術品だと思います。

    世界的にも認められ、ユネスコの無形文化遺産に登録されたのも日本人として誇らしいですし、歳を重ねる毎に和食が好きになっています。

    また、今まで食わず嫌いで柿を避けていましたが、そんなにもポテンシャルの高い食材だったんですね。

    早速柿を探して食わず嫌いを克服しようと思います。

  • ゆうしまる says:

    本日も貴重な記事をありがとうございました。

    自分は食=お腹を満たすの思考となっており、なかなか食を教養として捉えることが難しいです。

    その為、料亭やホテルで食事する時に運ばれてきた際は、食材や由来などを聞いてから食べるように意識しています。

    その時な感じることは、毎回食事って奥が深いなぁと感じます。

    少しずつ食の教養も身に着けていきます。

    ありがとうございました。

  • 江畑直人 says:

    Kさん、こんにちは。

    私は気の利いたワインを出されると、「飲みやすいですね」と答えてしまう側の人間です。

    味の感性に触れるのではなく、「飲みやすいかor食べやすいか」「美味しいか」「お腹に溜まるか」の視点でしか食を捉えられない私のフィルターとマインドに喝を入れてくれる、そんな記事でした。

    会員制の割烹などが存在しているという事実すら知らず、お恥ずかしい限りですが、食を”和の教養”として捉える視点が素晴らしいです。

    なぜ日本の和食文化が存在しているのか?
    平安時代の貴族が食してきた物は、和食のベースを成すものであり、和食の本質を知る上でも非常に大切な体験ですね。

    今回も素晴らしい学びの機会をありがとうございます。

  • mitsue says:

    Kさん、こんにちは。

    会員制の3席のカウンターと聞くだけで、和の素敵な空間が広がっているのだろうと空想してしまいます。
    季節も秋という事で秋の食材を贅沢に使った料理が写真からでも視覚、嗅覚、味覚を伝えてくれているようです。

    私も「和教養の聖域」に誘われてみたいものです。
    素敵な記事と食の教養の共有、ありがとうございました。

  • 真吾 says:

    Kさん、今回も素敵な記事をありがとうごいます。

    僕はボディビルの大会に出ていた経験から、食事管理を徹底していたつもりでしたが、「食の教養」という言葉を聞いて、これまで如何に自分が食事を「栄養素」として認知し、人生において大切な五感を磨くことや、その先にある愉しみを見落としていたかということを痛感しました。

    「体験から学ぶ。」

    様々なものがオンラインで完結し、食べ物も手軽に手に入ってしまう時代だからこそ、まさに本質的な在り方ですね。

    新たな視点をいただき、これから益々「食」というものが楽しくなりそうです!

    いつも大切な気づきを、ありがとうございます。
    次回も楽しみにしています。

  • Nobutoshi says:

    飲みやすいですね。言います(笑)

    このお店の主人のこだわりが詰まっていますね。

    まさに聖域でなにか儀式が行われているような感覚になりそうです。

    柿がこんなに芸術的に見えるとは・・。

    本日も自分にとっての非日常をありがとうございます。

  • 貴明 Takaaki says:

    Kさん、こんばんは。
    とても学びある記事をありがとうございます。

    私にとって食の教養とは作り手に対して敬意を払うため主に、残さず食べる事、実際に作る工程を経験することで食のありがたみを感じることの2つです。今回の記事でさらにその教養を高めるきっかけとなりました。

    平安時代は現在と比べて食物を安定的に取ることが難しく、生きることが難しかったと想像します。だからこそ、大衆を俯瞰して観ている貴族の人達は食物と生きること自体に慈しむ意を込めて節句に祝い事をしたのだと想像しました。

    柿を器にして滑らかな舌触りの大根のなますがとても美味しそうですね。私はなますがとても好きなので一度食べてみたいです。

    改めてありがとうございました。漫然と食べる自分の考えを改めることができそうです。
    次回も楽しみにしています。

  • 若菜 says:

    本日も学び多い記事をありがとうございます。

    外食ほど教養を学べる場はありませんね。
    作法や礼儀、歴史、コミュニケーションなど多くの重なりを学ぶことができる本当に重要な場所だと思いました。
    大切な気付きをありがとうございます。

    重陽の節句も今回久しぶりに目にしました。
    すっかり記憶から抜け落ちていた、自然の恵みに感謝する日。
    とても大切ですね。
    来年は忘れずに、心おだやかに過ごしたいものです。

    次回も楽しみにしております。
    ありがとうございました。

  • Yusei says:

    おもてなしの手札の数が凄いですね。

    ハンバーグが好きな僕にとっては、
    「和食」の魅力を必要十分に理解することは困難ではありますが、
    いつかその魅力に気付けるように様々な経験をしていきたいと思います。

    素敵な記事をありがとうございます。

  • ショウ says:

    初めて経験だから語彙力がたとえあったとしてもありふれた感想になってしまいますね。

    本当に美味しい料理が提供できる場所というのはメニューがなくて良いものなのだと思いました。

    選ぶ自由がない分、料理への期待は高まる。その期待を超えるべく日々持てる力のすべてを使って渾身の作品を提供し、感謝と感動を味わってもらう。

    良いもの作っていきたい側と良いものを味わっていきたい側がいるから成り立つ。

    私も少しずつですが色んな初体験を増やしていきます。

  • Sota says:

    食事とは、
    映画を鑑賞したり、本を読んだり、自然を満喫しに登山をするのと同じように
    自身の感性と知的幅を広げてくれる最高のひと時だとだと思います。

    もちろん、一般市民である私は経済の兼ね合いから
    コンビニでカップラーメンを買い「うめぇ、、」と口いっぱいに頬張ることもある。

    ・お高いレストランで高級なものを食す
    ・汚い居酒屋で、予想外の味に出会う

    どちらの場面でも、
    本当に”美味しいもの”と出会う確率はそう変わらないと思っていし
    その時感じた、感動や驚きに勝る幸福は生きていてそう何回もあることではない。

    彼ら(料理人)もまた、味を探求するartistなのである。
    限られた時間(人生)の中で、できる限りその出会いの機会を設け
    彼らの作品を存分に堪能したい。

  • 牧野協子 says:

    Kさん いつも素敵なcodawariの共有をありがとうございます。
    情け無い事に私はアルコールが全く頂けないので、そんな気の利いた言葉も使えないのです。
    もし、ワインを頂けたとしたら、その料理に合ったワインをソムリエが用意してくださると思うので、その、お料理を一口頂いてから、ワインを一口頂いて、「このお料理によく合いますね」と言えば、にわかワイン好きを演じられるでしょうか?
    少しは呑んでみたいという気持ちもあって、以前、女峰いちご酒 というカクテルを少し呑んでみたら、死ぬような怖い思いをしました。
    アルコールを分解する酵素を持ち合わせていないようです。
    でも、のめなくても場をシラケさせるような事はいたしませんよ

  • 肥田全弘 says:

    わずか3席のカウンター…至福の空間が想像できます。

    和食には日本酒が絶妙に合います。
    決して、ウイスキーのソーダ割りが合わないわけではないのですが、愛称とは不思議なものです。

    料理も、日本人が創る緻密な職人技を感じます。

    外食修行で様々な体験をしたいと思います。

    今日もこだわりをありがとうございます。

  • Makiko Kawano says:

    Kさん、本日は和食ですね!
    和食はとても繊細で、
    美しいイメージがあります。

    私は大概『おいしい』『飲みやすい』と
    感想を述べてしまいがちです。
    食の教養を身に付けねばなりません。
    こんなオシャレな修行なら
    いくらでも行きたいです!

    気になりました。
    柿の器はなますと一緒に
    食すのですか?
    あと7個と記載されているので、
    食す事は間違いないですよね?
    ポテトサラダのりんご
    みたいなイメージですかね?

    想像力が掻き立てられました。

    知らない事だらけで
    大変興味深いです。

    こんな最高のおもてなしを
    受けるに相応しい人間になりたいです。

    今回もCodawariのお裾分け、
    ありがとうございました!

  • 真里 says:

    Kさん、素敵な体験をシェアしてくださりありがとうございます。
    食を通じて倭人の心を学ぶKさんの在り方は本当に素晴らしいですね。私は自分の欲を満たす為だけに外食をするので一つずつ自分を満たしKさんの在り方まで到達します。
    素敵なKさんのお話をお聞きし、秋の食材が食べたくなったので近々柿を買ってきます。

  • 雄貴 says:

    Kさん、おはようございます。
    本日も食欲のそそられる記事を有難うございます!

    気の利いたワインをサービスされたときに、
    「飲みやすいですね」という感想を述べるの
    私です。。

    今までどれだけ五感を鍛える事に投資してきたか?がそのまま食事の場で現れると思いますし、

    それは経験でしか培われないものだと思います。

    そもそも割烹料理というものも、きちんと味わった記憶がないので、

    次のデートにチョイスしてみます。

    また一品ずつ出される際に、店主からの説明をよく聞き、味の感想を言い合う、というのも練習になると思ったので、

    ぜひ試してみます!

    次回も楽しみにしています。

  • りゅうき says:

    本日も素敵な記事をありがとうございます。

    重陽の節句という言葉を初めて知りました。

    なんでもそのことを知らない人は、
    つまらない感想しかできない。

    僕はなんでも体験して、
    なんでも知っているそんな人間になりたいです。

    お金稼いで、もっといろんな経験をします。

    次の記事も楽しみにしています。

  • 留莉 says:

    正直に申し上げると、葡萄酒を飲む機会を避けてきた大人です。

    知らないことを知らないままで終わらせないこと。まずは心に刻みます。

    実はKさんの影響で最近ワイン飲み始めました。
    「飲みやすいですね」から「鹿肉に合いそうですね」へ成長していきたいです!

    今まで食事を教養という目線で見る機会がなかったので、今回の記事で新しい視点が生まれました。

    教養としての食事を実践していきます。

    今回も素敵な記事をありがとうございました!

  • 歳國亞希 says:

    Kさん
    本日も学びあるエッセイをありがとうございます

    ワインに疎い私ですので、ワインを口にする前に学びを得てから頂きたいと心から思いました。

    私は、『日本に生を受けて良かった!』と様々な場面で感じることがあります。

    日本食を食べている際も然りです。

    ご紹介されてある様なお店でおもてなしを受けたならば、その想いは益々強くなることでしょう。

    見た目、味、気配り全てが、日本の心を語ってある事がわかります。

    まさに食からの教養ですね

    日頃の外食を教養という学びの場であると捉えるならば、こんな素敵な勉学はないと感じました。

    これから非日常のお食事を頂く際は、意識して多くを五感、知識として学んでいきたいと思います。

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